疑いと嫉妬

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室長が来てくれたから…私はここで退散ね。 私は室長が来てくれたことで野崎さんが喜ぶことと 自分もいい気分で帰れることが嬉しくてたまらなかった。 だって… 家では渉さんが待っている。 今日は 私が誰の女かカラダに刻むって… わ。やだ。想像… アルコールで火照った顔に熱が増す。 その時だった。 ドアを開けてすぐの段差でつまずいてしまった。 「きゃあっ」 バランスを崩して体が揺れる。 それを 室長がすくい上げるように抱きとめてくれた。 私の上げた小さな悲鳴は思いのほか店内に聞こえていたらしく、入り口付近のお客さんの視線が集まった。 「…すみません」 室長に謝りながら、その視線の持ち主みんなに謝っていた。 「桐谷君もだいぶ飲んでるな?ほどほどにしておかないと渉に叱られるぞ」 「す、すみません…」 室長はそう言いながら私の体勢を整え、私を腕から離した。 「…私はもう…帰ります」 「渉が首を長くして待ってるな?」 「…でしょうか…」 「そうに決まってる」 そう言われると何だか嬉しくて… 恥ずかしい。 私は照れてしまって顔を伏せた。
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