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社長が私の前を通り過ぎる。
ほんの一瞬、目が合った。
思わず視線を逸らすと、秘書と目が合う。彼女の眼差しは、とても冷たく、嫉妬に満ちた女の目をしていた。
「早苗さん、おめでとうございます」
本当は不安。
早苗さんがいなくなれば、この店の売上は一気に落ちる。
「華ちゃん、ありがとう。ここのアレンジ教室、希望者がいれば華ちゃんが続けなさい」
希望者なんて、きっといないよ。みんな小林早苗にフラワーアレンジを教わりたくて通ってるんだ。
本社のスクールに生徒はみんな流れてしまう。
「それは追々考えるとして。早苗さんも開校準備できっと忙しくなると思うから、店に常時いられないと思う。今の内に引き継ぎをしっかりして欲しい」
「華ちゃんがいれば大丈夫よ。ずっと私のアシスタントだったから。銀座のお店も、お得意先も全部一緒に回ってる」
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