第3話

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荷物はすべて浅井さんが持ってくれている。 そんな浅井さんの半歩後ろを歩いていると視界に入るジュエリーショップ。 別に何か今欲しいわけじゃない。 でもあのキラキラしたガラスケースの中のアクセサリーは見ているだけで幸せな気分にしてくれる。 「入ってみますか?」 「あ、いえ欲しいものがあるわけじゃないので……」 「ならいいんですが。やっぱり女性はアクセサリーが好きですか?」 「そうですね、見てるだけで幸せな気持ちになってしまいます」 「そう言えばずっと気になっていたんですがその右手の指輪」 「あぁ、これですか?」 右手の薬指にしている二連の指輪に目をやった。 「お揃いなんですね」 「はい、昔一緒に買ったんです」 ペアリング。 でも相手は遊華。 きっと食事の時なんかに気付いていたのだろう。 「何かの記念ですか?」 「ええ、遊華の独身最後の旅行の時に」 「そうですか」 「ずっと付けてるのでなんだか今更外すのもなって思って」 「いいと思いますよ。お互いすごく大事に思って理解しあってる2人だと思いますし」 「そうですか? 浅井さんと紫月さんもですよね」 「そうですね」 気付けば夕方。 ショッピングモールの天井から見える空は赤くなっていた。
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