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「でも、今となったら恭一君のその意志の強さに感謝しかないわ。
もし、恭一君とそういう関係になってたら………航大のお葬式に出る資格もなかった。
それに、郁ちゃんにも」
真剣味を帯びた瞳が私を見つめる。
「恭一君が何よりも大切なもの見つけたのに、私とのことが足を引っ張って幸せになり損なったら………。
恭一君にも郁ちゃんにも、合わせる顔がなかった」
凛としたその声に、心の奥が震える。
「今まで引っ掻き回して、散々ひどい目に遭わせてきたんだから、今更かもしれないけどね」
自虐的に微笑む悠花さんに伝えるべき思いがまとまらなくて、ただただ首を横に振った。
「信じてくれないかもしれないけど恭一君、本当は繊細で傷つきやすくて寂しがり屋さんなの」
「………なんとなく分かります」
「ふふ、その恭一君が郁ちゃんには素直に喜怒哀楽を出せる。
それだけで私、泣きそうなくらい嬉しいのよ」
そう言って、私の手を握りしめてくれた。
「困った人だけど、これからもそばにいてあげてね」
手のひらから伝わる悠花さんのしっとりとした温かさが、私の胸のモヤモヤやドロドロとしたものをゆっくり溶かしていく。
「先生……謝ったら許してくれるでしょうか」
「当たり前でしょう。
あっちも今頃悶々としてると思うわ。
────もうそろそろかな?」
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