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――美味しいワインをあげるよ。
ワインのソムリエ・外井 理生(そとい りお)は彼女・向田 恵奈(むこうだ えな)を自身が経営するワインバー・赤い魂へ招待した。
付き合いだして早五年……。
結婚も視野に入れ始めた頃、恵奈の浮気が発覚した。
原因は理生が仕事ばかりで恵奈を放っておいた事だった。
和解に意味も込めて理生は恵奈を自身のワインバーに招待したのだった。
「…………」
理生は自慢のボトルをぼんやりと見つめている。
そしてふと時計に目をやる。
待ち合わせの時間はとうに過ぎている。
やはり、修復は不可能なのかと理生は溜息をついた。
ゴトン……。
何の前触れもなく一本のワインボトルが理生の前に転げてきた。
不思議に思いつつ理生はそのワインボトルを手に取った。
見覚えのないワインボトルに理生は言い知れぬ違和感を感じた。
「それに触れてはいけません」
か細い女性の声が理生の耳に入ってきた。
「カオリさん!」
理生が振り返るとそこには一緒に働く赤坂 カオリ(あかさか かおり)がいた。
カオリさんはある日突然うちの店にやってきて押しかけ的な感じで働くようになった。
何処の馬の骨かわからなかったがソムリエの資格もある事と人出が欲しかったのとでカオリさんを雇う事にした。
丁度その頃くらいからだった。
恵奈の様子がおかしくなってきたのは……。
初めはヤキモチかと思っていたが真相はわからないままだ。
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