秘密の秘密

20/27
1473人が本棚に入れています
本棚に追加
/276ページ
「垣内さん、リビングにいますよ」 又もや旦那様の声によって私の足は動くことを思い出し、やっとリビングにいる旦那様の元に向かうことができました。 旦那様の前には、お嬢様が無表情でソファに座っています。 「ああ、垣内さん。 申し訳ないが、蒸しタオルを作ってきてくれませんか。 汚れた娘の手を拭いてやりたいんです」 見ると、お嬢様は手だけではなく、衣服や顔までが血だらけでした。 私は慌てて何枚もの蒸しタオルを作りました。 旦那様は、それを使って丁寧に優しくお嬢様の手や顔を拭いていきます。 「パパ……眠くなっちゃった」 お嬢様は無垢な白百合のような表情で旦那様を見上げ、旦那様はそうかそうかと優しい目をしてお嬢様の手を取ると、寝室へと連れて行きました。 外を見ると、気が付けばどっぷりと日は暮れています。 いつの間にか結構な時間が経っていたのです。 大量の汚れた蒸しタオルを片付けた私は、あの惨状を見に行く気にはなれず、旦那様を待ってリビングで待機していました。
/276ページ

最初のコメントを投稿しよう!