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「垣内さん、リビングにいますよ」
又もや旦那様の声によって私の足は動くことを思い出し、やっとリビングにいる旦那様の元に向かうことができました。
旦那様の前には、お嬢様が無表情でソファに座っています。
「ああ、垣内さん。
申し訳ないが、蒸しタオルを作ってきてくれませんか。
汚れた娘の手を拭いてやりたいんです」
見ると、お嬢様は手だけではなく、衣服や顔までが血だらけでした。
私は慌てて何枚もの蒸しタオルを作りました。
旦那様は、それを使って丁寧に優しくお嬢様の手や顔を拭いていきます。
「パパ……眠くなっちゃった」
お嬢様は無垢な白百合のような表情で旦那様を見上げ、旦那様はそうかそうかと優しい目をしてお嬢様の手を取ると、寝室へと連れて行きました。
外を見ると、気が付けばどっぷりと日は暮れています。
いつの間にか結構な時間が経っていたのです。
大量の汚れた蒸しタオルを片付けた私は、あの惨状を見に行く気にはなれず、旦那様を待ってリビングで待機していました。
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