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「いつまで突っ立ってるつもりだ。早く仕事に取り掛かれ」
「……申し訳ありませんでした」
やっと終わった。
悪夢のような長い長い小言が。
聞き流していたとしても、一度始まると30分は離してくれない。
皆の前で罵倒され続け、屈辱に打ち震える身体を回れ右して自分のデスクへ。
四方からは、同情と憐れみがこもった視線が突き刺さる。
テンションだだ下がり。
仕事する気力が全部部長に吸い取られたようだ。
大きく深呼吸。
秋山課長が上司だったらと、そんな夢はもう見ない。
営業に居る限り、私の上司は間違いなくこの薄らハゲなのだから。
仕事が出来ない自分。
上司にいびられる日々。
社内に飛び交う「噂」にだけ、気持ちを癒される毎日。
26歳なのに、ワイドショーや昼ドラにかじりつくオバサマと、なんら変わりない。
それが、今の私の現実だった。
向かいの席を眺める。
整理整頓されたデスクと閉じられたPC。
忙しい東條を恨めしく思う。
同じ配属先になって、喜んだのは最初だけ。
すぐに自分のスキルの低さという壁にぶつかり、恋だのなんだのと騒ぐ余裕がなくなったから。
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