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彼のマンションのソファの上で、私たちは向かい合うような姿勢でキスを交わしていた。
週末になると、亨の仕事が忙しくなければ大抵捕獲される。
彼のキスはいつだって優しくて、じわりと身体の芯が熱いくらいに疼き始める。
その感覚に煽られるように、思わず言葉に出してしまった。
動きを止めた亨と、少しだけ唇を離したまま見つめ合うと、彼の瞳の中に私が居る。
首筋を捉えたままの彼の手がさらりと肌を撫で、その心地よさに私は思わず目を細めた。
「……やっと言った」
彼の目が三日月に歪んだのを見て、すぐ。
噛み付くように、深く唇が重なって吸い上げられる舌に声も出せなくなった。
「……っ」
息苦しいほどの激しさに、目を回しそうになる。
覆い被さる彼の背中にしがみつくように、シャツの布地を握り締めた。
ふわりと鼻腔を擽る煙草の香りにさえ、酔ってしまいそうだった。
彼と私の香りが同じになるくらい、もっともっと、近づきたい。
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