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その人は突然私の前に現れて、好き勝手やりたい放題、振り回すだけ振り回してーー消えた。
「僕のことなんかすぐに忘れる」
そう言って笑って消えた太朗を、忘れたくなくて。
縋るように綴った一冊のノート。
見返しては確かめる。
大丈夫……まだ覚えてるって。
そんな安堵と常に共にある恐怖。
いつかこの記憶は消えてなくなる。
突然その日がやってくるのか。
既に徐々に薄れているのかは私には分からないけど。
それが恐ろしくて仕方ない。
もう伝えることも触れることもできなくても。
それでも。
私は太朗が好き。
この気持ちだけは……忘れたくない。
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