愛せない女 Ⅶ

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「………。」 黙ってしまったわたしをチラリと横目で見て、トラは大袈裟にため息をついた。 「……あ! 今『いい年して何やってんだ。』って思ったでしょ~。」 わたしはわざとおちゃらけて明るく言ってみせる。 なのに、その空気はたちまちトラの正論に打ち破られてしまった。 「ホント。 高校ん時から全然成長してねーな。」 「うぅ…。」 ぐうの音も出ません。 そう。 トラはいつだって正しい。 わたしの性格もよく知っているし、わたしが進むべき正しい道も、 トラならきっと導いてくれるだろう。 だけど、今日は。 優しい言葉が欲しかった。 『須藤 湊人』という一人の男の人に、 初めて自分から興味を持ったこと。 この気持ちを肯定してほしいわけじゃないけれど、 否定もしてほしくなかった。
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