【第6話】ひねくれた嘘

2/34
2033人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
  苦々しく過ごした週末がようやく終わった、月曜日。 羽村の機嫌は、すこぶる良かった。 それは仕事がひとつ片付いたから、という類いのものではないと、浮かれたような雰囲気でわかる。 この週末に一体何があったのか……考えたくはないが、おそらくあの人が絡んでいるんだろう。 数日前まで何かを考え込むようにむっつりしていたくせに、何だよその変化は。 あまりに顔色の良い羽村を見ていたら、つい、口を出したくなってしまった。 「……なんだよ、やけにご機嫌だな」 「へっ?」 俺の問い掛けに答えた羽村の間抜けな声に、頬が引き攣る。 「顔、緩んでるぞ。何かあったのか?」 「え、べ、別に何も?」 本当に何でもない、というような素振りを見せる、が。 ……ハッキリ言って、それで誤摩化されると思ったら大違いだからな。 .
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!