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「香こそ何よ!!
自分が幸せだからって、私にまで幸せの押し売りしないでよ。
私は別に彼氏もいらないし、結婚願望もないの。
女が仕事に生きて何が悪いの?
もう、ほっといてよ!!」
「人の気も知らないで!!
わかったわよ。
もう、勝手にすれば!!」
と香は財布から一万円札を取り出すと、私に押し付けて、店から出ていってしまった。
……怒らせちゃった。
二人ともいい年して、人前で喧嘩なんて、大人気なかったな。
私も、お酒を飲み干してそそくさと店を出た。
あの時と同じ、まだ花のない桜並木を見上げて、はぁーっとため息を一つ。
私も、少しは成長できてるんだろうか。
……いつになったら、中途半端を抜け出せるのかな。
「はあっ」
私はもう一つ、ため息を吐いて、無意識に幸せを遠ざけた。
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