紫陽花

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「おい、パール」 俺はしゃがむとパールの喉元を撫でながら話しかけた。 「お前、この間話聞いてなかっただろ?あんまり引っ張るなって言っただろ。……えっと」 俺は彼女を見上げた。 「えっと名前、なに?」 「えっ、パール?」 「いや、じゃなくて……」 聞きたいことが分かったらしく、自分の勘違いに少し恥ずかしそうにしながら「由奈です」と教えてくれた。 「由奈ちゃんが転んだら大変なんだからな。走るなよ。分かった?」 犬に向かって真剣に言い聞かせる俺に彼女はフフっと笑う。 「じゃあ……」 いつもと同じ様に彼女にリードを返し手を上げ別れる。 数歩歩き振り向くとパールは走らず歩いている。 そしてふと振り向いた彼女に手を振ると、彼女は恥ずかしそうに軽く手を振り返してくれた。
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