Act.0 Darkness

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 八月五日。シークレットガーデン。  芝生の上に座る凜華はゆっくりと辺りを見回した。  深い深い闇が私を覆い隠す。この闇に飲まれていると幼い頃監禁されていたあの冷たい独房みたいな部屋を思い出すわね。  冷たい石造りの壁に開ける度に耳障りな音を奏でる鋼鉄の扉。所々腐食している木の骨組みに固い布団が置かれ、ボロボロのシーツが掛けられているベッド。何かを繋いでいたか分からない手枷と足枷と首輪。気味が悪いけどいずれも鋼で出来ているため夏はそれらを触り涼んでいた。冬は一枚だけ与えられた粗末で穴の開いた毛布を隙間無く身に巻き暖を得ていた。 「ふふふ、私が過去を振り返るなんてね。愚かだわ」  過去を懐かしんでも時間が戻るわけではない。未来が変わるわけでもない。まさに無意味だった。  しかし、待つだけという退屈な時間の檻に閉じ込められた凜華に出来ることは多くは無かった。  早く来なさい新城雄仁。そして私の孤独と退屈を潰して頂戴。  凜華が目を閉じしばらくすると闇がさらに深まる。そんな中ひとつの明かりが中心部までたどり着いた。  凜華の物語の第二幕が開かれた。
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