第一章

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今日はいつもより確実に良い日だ。 空も雲一つ無く晴れ渡り、 人々も活気溢れて楽しそうで………… 父親から用を頼まれていなければどんなに嬉しかったか。 別に父親が嫌いとかそういうことではないんだが。 …俺の父親は何を考えてるのか分からないんだよ。 まぁでも今回は比較的まともな頼みだったし、良いんだけどな。 あ、因みに俺はアルフォード・ディスパニュー。 貴族で…次期当主だ。 今日父親に頼まれたのは書類の受け渡し。 アイラさんという人とさっきまで会ってたんだが… 何の話だったんだ? 父親に聞いてもにやつくだけだった。 かといってアイラさんに聞くのも失礼だろうから、 結局封筒の中の書類がどんなものだったのか、 分からずじまいになってしまった。 「ハァ……」 思わず出てくる溜め息を抑えることもせずにボーッと市場をぶらつく。 せっかく中々来れないところに来たんだし、 ウチの領地の参考にもなるだろ? どうせ俺の意見なんか父親には通らないだろうが、な。 …………ん?なんだアイツ。 不意に路地裏からチラッと…本当にチラッとだが、 こちらを覗いている男が見えた。 こちらを、って言っても俺じゃないみたいだが。 なんだ?あの変態。 帽子であまり見えないが髪は恐らく白だし、 こちらを覗くその瞳は赤。 ………敢えてもう一度言おう。 なんだ?あの変態。
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