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大学二年の十月になった。
幼馴染である彼女が、同じ大学にいたと知ったのは、この頃だ。食堂で会って……そう、かれこれ五年ぶりだと、僕らは互いを懐かしんだのだった。
それから三日後、食堂にて再会。再び隣の席で昼食を食べている時、彼女は唐突に言った。
「変わったね、あんた」
「何が」
「大人しくなった」
「……よく言われるよ」
「もっとうるさかったよね。暑苦しかったわ、あんた見てると」
「そっか、じゃ、今はちょうどいい程度だろう?」
「いいや」
「……なんだ?」
「ふふっ、昔のあんたが好きだったよ、私は」
「……ははは、そっか。それは残念だ」
肩を竦めて笑う、強気で素直な彼女は昔から変わってない。ずっと。
なのに今、平気で隣を歩いていた筈の彼女の肩に僕が触れることすらできないのは……訳はわかってるけど……。
「ねぇ、そういやあんたさ、サッカーまだやってる……よね?」
物思いに耽った時、不意に振られた話題の矛先。しかし、別に驚くことも出来ず、僕は答えていた。
「やめたよ」
「は、はぁ!?マジで!?」ガタッと、彼女の座る椅子が跳ね上がった。
「もう、やんねー」覇気無く返す。
「うっそ、あんたボールが恋人だったじゃん……」
「それは昔だ」
どこまでも静かな僕の言葉。
彼女は俯いた。前髪で顔が隠れてよく表情は見えない。
「そっか……ちょっと来い」
「え?」
突如、僕は彼女に腕を引かれ、食堂を後にした。ラーメンは、食べかけだった。
***
「え、えっと、体育館裏だよなここ。何なんだよ」
僕は、彼女の意図が掴めずに首を傾げた。と、その刹那のことだった。
「あんたが好きだ!」彼女は叫んだ。
「……は?」
「って言ったとして、あんたどうする?」
「ま、待て、話が見えねえ!」
「つべこべ言わずに、言え!」
彼女の予想外の剣幕に、僕は怯み、落ち着いた。そして、今思いつく解答を、そのまま……。
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