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階段を昇り降り、地下通路を抜けて別の建物へ。しかしそれでも尚アイラの追跡は止まらない。
「くそっ、なんつー体力だ。付き合ってらんないぜ」
オレは西の塔の最上階の部屋へと逃げ込む。
窓から学園内を見渡せるその部屋では、女性が一人竪琴を引いていた。
「あら、新米清掃員のシグルイ様。またアイラ様に追われてらっしゃるのですか?」
竪琴の音色が止まる。女性が顔を上げ、荒い息を吐くオレを見た。
「あぁ、その通りだ。悪いがまたかくまってもらえないか、エルミナータさん」
「ふふ、エルナと呼んでいただけたらそういたしますよ」
「じゃあ、頼むぜエルナさん」
「では、そちらの棚の影に隠れてください。アイラ様はわたくしが対応いたします」
オレは急いで棚の後ろの隠れる。その直後、乱暴な音がして扉が開かれた。
「ハァ……ハァ……確か、あの清掃員はこっちの方へ逃げたはずだが……!」
アイラが呼吸困難一歩手前の状態で部屋の中を見渡す。
「いいえ、こちらには来ませんでしたよ」
エルナさんはくすくす笑ってアイラに告げた。
「くそっ、どこに逃げたんだサボり魔清掃員めー!!」
またしても乱暴に扉が閉められ、階段を猛烈な勢いで下っていく足音が聞こえた。
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