第1章

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俺の手のひらからライターも取ると、慣れた手つきで火を生んだ。 見ていると、口先だけでくゆらすのではなく、肺の底までしっかりと害煙を送り込んでいる。 吸うという言葉に偽りはないようだ。 「なに? 『タバコ吸う女、サイテー』 とか言っちゃうタイプ?」 「別に。 自分が吸っておいて、そんなこといえた義理じゃないだろ」 「じゃあ、今のカノジョが吸うって言ったら?」 「全力で止める」 「あはははっ! 勝手だねぇ」 自分の膝に肘をつき、顎を支えながら声を立てて笑う水野。 その横顔を眺めていると、どうしても聞かずにいられないことがあった。 「水野、」 「んー?」 「なんか、あった?」 俺の言葉に顔を上げ、驚いたように視線を合わす。 「………なんで?」 「や、なんとなく。 今日の水野、らしくなかったから」 困ったように下がる眉。 ふは、煙とともに吐き出された笑みは弱々しい。 「もうさあ、そういう優しさって罪だよね、ホント」 「………悪い」 「ううん。 そう意味じゃなくて。 ………ありがと」 俺の方を見ずに、タバコを口元に運ぶ。 「────なぁんか、うまく行かないよねぇ、人生って」 細く長く吐き出したあと、乾いた笑いを、転がした。
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