シスターズ・ロイド

――コード〇二（ゼロツー）アリア起動――

それはベッドの上で眠っていた。静かに、そして永久の眠りに就くように。

色白で華奢な腕、金色の長い髪に白いワンピース。しかしそれを形作る物は機械。

ぴくりとも動かぬその姿は正しく機械人形そのものである。

やがて、一種の起動信号が送られたそれは決められたプログラムに従って上半身を立ち上がらせた。

駆動音はない。起き上がりの動作も気怠いようにゆっくりとしている。

間も無く、それは人間の動作を真似るように息をした。

小さく口を開き、腹部を膨らませ、吐く動作。

次に行ったのは人と同じ構造をした瞼を開ける事である。

起き上がりから瞼を開けるまでを一つのサイクル動作として動き、それは一人の男をその碧眼で見つめた。

「おはようございます、マスター」

それの前には二つの人影があった。

一人はそれがマスターと呼んだ無精髭の白衣の男。もう一人は男の横で記録用小型液晶ディスプレイを持つ白衣の女。

白衣の男の名は鈴沼賢（すずぬまけん）。若干二十五歳にして株式会社テムジック開発部全取締り部長を任されているアンドロイド『コード〇二アリア』の内部システム開発者である。