20人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「こんにちわぁ~、お一人ですくぁ~?」
まるでソフトキャンディでも食べながら喋っているのかと思うような、滑舌の悪い声がかけられて来る。
「初めましてぇ~、あたし佐伯 ミカって言いまぁす!」
振り返ると、やたら重そうな睫毛をばさばさと瞬かせる、二人の女性が佇んでいた。
「あたしは森本 カノンでぇす!」
「お隣、よろしいですくぁ~?」
驚きに硬直していると、彼女達は私の返事を待つ事もなく両隣に腰を下ろしてしまう。
いや、ならば 「よろしいですくぁ?」 と聞く必要はなかったのでは?
そして何故そんな喋り方なのか……。
私は思わずピンクのルージュがべったりと塗られた、二人の口許を凝視する。
ソフトキャンディは歯にひっついて、非常に食べにくいのだ。
口に含みながら言葉を発すると、ちょうどこんな喋り方になるのではなかろうか。
「お兄さん、カッコイイですねぇ~」
「どうしてこんな所にいるんですくぁ~?」
ねとねととした声を放つ彼女達の口許に注視していると、不意にここにいる目的を尋ねられた。
町田結婚相談所主催の婚活パーティー。
都内の多目的ホールで催されたこのパーティーには、人生の伴侶を求める男女が参加している。
当然、私も運命の出会いを求めてここに来た。
「婚活パーティーですからね、私も結婚相手を探しているのですよ」
カウンターに置き去りになっていたロックグラスに手を伸ばし、私は皮肉げにそう答える。
すると彼女達は弾かれたように甲高い声を上げた。
「えぇ~? お兄さんその顔で独身?! サクラじゃないの?!」
「マジで? 超胡散臭いですけどぉ~!」
「…………」
非常に五月蝿かった。
そして彼女達が普通に喋れる事が判明した。
「えぇ~と、なんで結婚してないの? ってか、なんで結婚出来ないの?」
「変な趣味あるとか?」
「…………」
最初のコメントを投稿しよう!