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「俺、和装だと、動きがおかしくなるんです。裾とか袖とかに気を取られすぎてて、不慣れなのがバレバレ。だから、時代劇とかできないんです。それでほんとに困ってて」
「ひどいのよこの子。唯一の欠点かしらね。着物着ると着られちゃって。演技どころじゃないのよ」
「で、私が何を?」
「和装の時の所作を教えてやって欲しいのよ」
「え? 私、人に教えたことなんかないもの。無理よ」
「大丈夫。咲也は勘のいい子だから、教えなくても覚えるわよ。ねえ? 咲也」
「図々しいかもしれないけど困ってて。お願いします。光岡さん」
2人に頭を下げられて、仕事もしていない私は断るにも断り切れず、まったくなんの役にもたたないかもしれないと、何回も念を押してから、咲也と連絡先を交換し、来週の金曜日にやまぶき邸に来るよう、咲也に伝えた。
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