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そのまま何が何だか分からないまま、皆の会話を聞いていたけども、相変わらず何が良かったのかさっぱり分からない。
そんな中、コツコツとノックをする音が聞こえた。
ノックをする音ですら、すぐに分かった。
…雅さんだ。
「梓!」
やや興奮に満ちた声。
「…雅さん。」
戸惑いながらも返事をする。
すぐに甘くて魅力的な雅さんの香水が香った。
雅さんは誰の目も気にしてないという感じで、すぐに私を立ち上がらせて優しく抱きしめた。
「…梓。…これでもうコソコソしないで済む。君は立派な俺の婚約者だ。」
「……。」
…なぜ?
さっきのスピーチの何が?
ぐるぐる回転する思考。
カチーンと固まったまま、そのままでいると、日野さんの声が聞こえた。
「じゃあ俺達は退散するか。…雅、有頂天になるなよ。」
「分かってる。大丈夫だ。」
その艶っぽい声は、ほんの耳元そのままで聞こえた。
ドクン、と心臓が鳴った気がした。
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