第3章

7/13
8049人が本棚に入れています
本棚に追加
/334ページ
足が前に出ない。 待ち合わせ時間まで後5分。 柱の向こう側には女性の視線を浴びても動じずクールに立っているイケメン。 待ち合わせが人通りの多い駅前だったのを心底後悔した。 お待たせ、と走って行けばいいのだろうけれど、あの視線が全て自分への敵意や好奇に変わるかと思うと、なかなか動きだすことができない。 「くっ。ヘタレだなぁ、私は。」 思わず漏れる溜め息。 「ここまで来といてビビるなんて、子供かっ。大丈夫、そこまで私も衰えてないはずよ。笑顔で駆け寄れば…。」 「聞こえてますよ、独り言。」 真後ろからの恥ずかしい指摘に驚いておもいっきり振り向くと、そこにはさっきまで柱の向こう側にいた鈴村さんが立っていた。 ビックリして言葉を失ったままの私に、 「改めまして、鈴村です。」 と微笑みかけてくれた。 でもやっぱり少し冷たい感じがするのは、まだ良く知らないせいなんだろうか?
/334ページ

最初のコメントを投稿しよう!