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脱衣所の入り口近くに座りこむ私の元に成瀬さんが歩み寄る。
「おまえ、髪。」
全く拭きとれていなかった水滴が短い髪を伝って肩にポタポタと落ちていた。
タオルも持たずに脱衣所を出たけれど…
今は…脱衣所には戻れない。
すると、成瀬さんが何かを思い立ったように自分の荷物からタオルを取り出し、それを片手に戻って来た。
成瀬さんは意外にもすごい汗っかきのようで、毎日会社にタオルを持参しているらしい。
本人いわく、ハンカチレベルじゃないとのこと。
「…だから、汗臭いかも。」
「…それはいいけど。…ありがと。」
私はそのタオルで髪を拭いた。
それから、成瀬さんとは会話もせずに、私は黙ってタオルを握りしめていた。
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