時生の世界

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病院の屋上。 フェンスの先で眺めよく下を見下ろせる場所に 足を投げ出して座る小学生の時生。 目を閉じて顔を空へ向ける。 ーー莉音……。 俺はね、こんなに君を愛したのには何か理由があるんじゃないかって思ってた。 時空を行き来できるのにだって 最後の希望だったのかもしれない。 君が死んだその日から俺は変わった気がする。 きっと知ってはいけない世界に足を踏み込んでしまってただろうな。 時を変えすぎて俺の身体が悲鳴を上げている。 でも幸せを見つけれた。 大人になった君に出会えて心底よかった。 もっと愛おしく思えたよ。 俺と出会った証を残すことができた。 これでまたあの世界が変わるだろう。 俺じゃない俺。 そして莉音。 幸せになってくれ。 時生はそっと自分の胸に手を当てる。 ーー俺は俺で君と同じ時を歩むよ。 君がこの世界からいなくなる日に僕たちの時を止めよう。 手に力を込め、光り出す。 そして時生は眠る。 ーーいつまでも一緒に……。 大好きだよ。 と、空から1枚の写真がヒラヒラと降ってくる。 その写真には ウェディング姿に身を包み、 幸せそうに微笑む大人の莉音と時生の姿が写っていた。
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