悪魔

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部屋に戻ると、彼は寝ていた。 「信也、こいつの名前付けたのか?」 「あぁ、無知にしたよ、何も知らねーから」 そう言いながら、ゲームを夢中でやっていた。 「アホかお前は。そんなくだらない名前にしやがって」 「いいじゃんいいじゃん、どうせ悪魔は付ける気なかっただろ?あ、今ラスボスだから黙ってて」 こいつは相変わらず変わらないな。 少しは勉強でもすればいいのに。 しかし、こいつが勉強会に参加したら、五月蝿くて仕方ないかもしれないと、考え直した。 目が見えないのに器用に編み物をしている雫に 「さっきお前の兄ちゃんに会ったぞ」 と告げた。 「そうなの?お兄ちゃん元気そうだった?」 ニコニコして聞いてくる雫に、あいつは少しお節介だったと言うと、笑った。 「最近会ってなかったから、近々行こうと思ってたんだぁ」 この兄弟愛には何故か勝てない。 お互い愛し合っているんだろう。 たった二人の兄弟なんだからだろうな。同じ環境に居たのもあるのだろう。 「…無知はどんな感じだ?」 早速名前で呼んでみた。 「さっき施設の中でどこか行ったみたい、それに初日だから疲れたんだろうね、戻ったらすぐ寝ちゃったよ」 雫は口に人差し指を立てて、シーと小さい声で話した。 「そうか…」 内心ほっとしていた。付き合いかたがわからないから。 「公園行ったみたいだよ」 部屋の扉が開き、秋が帰ってきた。 「階段のバケモンが言ってた」 「公園かぁ、じゃあ敦士に会ったのかな?」 「そうじゃねーの?」 ラスボスを倒して暇になったのか、信也が話にのってきた。 「あいつもよくやるよなぁ、俺だったら子守りなんて絶対やだね」 「ほら、信也くん、敦士くんは保育士になりたいんだから…」 知ってるよーと床にゴロゴロしながら信也は返事をした。 こいつは本当に自由すぎる。 時々ぶん殴りたくなる。 「敦士の指を見たのかな?あれでここが普通じゃないのわかるといいのになぁ」 「多分もうわかってるよ、後は慣れだね」 信也と秋が話してる中で、俺はベッドに近付き、無知の顔を覗いた。 あどけない顔だ。小学生くらいの、小さな身体は、規則的に呼吸をしている。 おでこの爛れた部分を指でなぞる。 すると、此方側に寝返りをした。 涙の流れた跡がある。 夢でさえもこいつはまだ苦しんでいるんだろう。 此方も悲しくなった。
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