初恋の重さ

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「あれー?薫さん、また会ったね。」 内定の会社に挨拶をした帰りの出来事だった。 どこか良いお店を開拓しようと、近くのカフェに入ると彼女がいたのだ。 「め、恵さん。こちらで働いてたんですか?」 「1週間前からね。凄い偶然。」 笑顔で席に案内された。 制服とトレーをもつ姿が似合いすぎている。 アドレナリンが大量に分泌されているのがわかった。 「ここのお勧めは、エスプレッソですよ。薫さん、ブラックで飲まれてましたよね?」 優しいあなたは、好みまで覚えてくれていた。 「恵さん。」 「はい。」 この笑顔が営業スマイルでも構わない。 「もう一度会ったら、告白しようと思ってたんです。」 「え?何をですか?」 「恵さんのこと、好きです。」 ここが店だろうが、関係なかった。 言わずに後悔などしたくない。 薫は、キチンと目を見て、はっきりと伝えた。 恵はキョトンとした顔をしていたが、意味を理解したのか途端にコツンと持っていたトレーをあてた。 「付き合ってる人がいるのは、分かってます。」 「え?!」 「けれど、納得出来るまで、私は追いかけます。」 「よ!色女!」 「え?て、店長?!」 カウンターにいた店長と呼ばれた1つ髪に結んだ女性が、ちゃちゃをいれてきた。 「若さ溢れる告白。清々しいね。」 何やらご機嫌な店長の桜木は、エスプレッソを入れた小さなカップをテーブルにもってきた。 「恵さんには、直球しか効かないので。」 「好きな人以外、見えなくなるタイプだからねぇ。」 「私、自分から好きになったの初めてなんです。」 「お?まさに初恋かぁ。さらに青春だねぇ。」 おいてけぼりの恵は、二人の会話にやっと意識が戻り、慌てて参加してきた。 「ごめん、薫さん。私は、、、。」 「断られても、まだ諦めれません。」 「高橋、がんばれよー。初恋は中々忘れられないからねぇ。」 面白げに笑いながらカウンターに下がる店長。 分かってるじゃない。 薫は言い切った事で胸がすっきりし、濃厚な豆のにおいを堪能し、エスプレッソを一口飲んだ。 「美味しい。」 薫は頭のなかで、週何回ここへ足を運ぼうか、計画を練り始めたのであった。
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