790人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
春香と別れてからの自分は荒んでいた。
怒りと悔しさとみじめさは強い酒を飲んでも消えず、春香への対抗心からいろんな女を抱いた。
一人の女が俺の前から消えたことぐらいどうだというのだ。
私に抱かれたくて言い寄ってくる女はこんなにたくさんいる。
有る意味、春香にみせつけたかったのだろう。自分はこんなに魅力のある男なのだと。
だが……
数をこなして優越感は満たされたが、心は一向に満たされなかった。
そればかりか、やればやるほど自分が虚しくなっていった。
荒れ果てた荒野を1人で延々と歩いているようなものだった。
“敦志さん、愛してる。一生、あなただけ”
魅惑的な、甘い香りをふりまきながら、春香の幻影が脳裏を横切り、ふっと嘲笑した。
あの言葉を聞いたのは、遥か昔のことのようにも感じるし、つい最近のことだったようにも思える。
最初のコメントを投稿しよう!