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仕方なく立ち上がり、歩を進めてスマホを取り上げた。
ディスプレイには榊の名前が表示されている。
「榊か? どうした? こんな時間に」
迷わずタップして耳にあてたものの、返事がない。
「榊? どうし…」
「…敦志さん、お久しぶりです」
ドクンと心臓が音をたて、血が走り出した。
この…声の主は……
「……………春…香?」
どうして榊の番号から彼女が……?
「今、ホテル東京のロビーにいます。部屋の番号を教えていただけませんか?」
「どうして…君が……」
なぜ、ここの場所がわかったんだ……?
「お会いして、どうしてもお話したいことがあります」
だが、そんな小さな疑問はどうでもいい。
春香が今、ここにいる。
彼女がすぐ手の届く所にいる。
会いたい……!
「…2020号室」
気づけば、口から勝手に滑り落ちていた。
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