第1章

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 窓から外を眺める乙女たちの後姿はみな、今流行の腰まで伸ばした金髪ウェーブをハーフアップにしたヘアスタイルだった。  窓がだんだん赤くなり、乙女たちの立つガラスの向こうに見事な夕焼けの空が広がっているのが分かった。  私もその合間から外を覗いてみた。  遠くにそびえる山の上が真っ赤に染まる。  なんと美しい夕焼けか。  ところが、うっとりしたのも束の間、山のてっぺんが真っ黒の雲に覆われた。  その雲がもくもくと物凄い勢いで私の居る街に向かってくる。  いまだかつて見たことのな山の豹変と空の色のドス黒さにうららかだった空気が一変し、混乱した。  乙女達も私も慌てて温泉からあがり、体を拭くのもそこそこに、ノースリーブの足首まである白いドレスをまとって外に出た。  そして私は、家とは反対方向の山を振り仰いでもう一度確かめた。  やっぱり、どす黒いもくもく雲の勢いは衰えることなく、どんどん青いお空を覆いつくして、飲み込んでいく。  私の頭上はまだ美しく澄んでいるけど、夕焼けだなんてどうして思ったのだろう。  黒雲が頭上を覆い尽くすのにあとどれ程の猶予が残されているんだろう。  私はドレスの裾をまくし上げて家へと急いだ。  「ママ! 大変、お山が!」  叫びながら家に駆け込んだ私を迎えたのはパパとママの真っ青な顔だった。  黒雲はもうすぐそこまで来ている。  青いお空がついにその姿をドス黒い雲にすべておおい隠されてしまった。  バルコニーから見下ろしたギリシャ神話そのものの美しい私の街が真っ黒な陰にスッポリと落ち込んだ。  さらに、空の黒雲の中ではゴオゴオと炎が燃え盛っているのが目に飛び込んできた。  そして、ついに!
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