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「いたたた……噂通り、重いのくれるなあ」
寝台に乗り出していた彼の身体、今床へと落ちている。
俺は拳を握りしめたままだ。
「……アンタ、本当にどこまで知ってるんだ」
「さあねえ。ただなんでそこまでして後輩くんを守ろうとするのかなって、不思議なだけ」
懲りずに寝台まで近づいてくる芹澤さんに、身じろぎする。
「あはっ、そうしてるとその平凡な顔も少し可愛く見えるね」
「平凡はほっとけ!!!!」
俺氏、この状況にも関わらず突っ込むくらいにはまだ余裕があるとみた。
そんなことよりだ。
どうしてこの人は、そんなことまで知っているのか。
「俺と兄さんの傍にはさ、得体の知れない人間は寄っちゃダメなんだ」
「得体の知れない……?」
「俺にとって大半の人間は、得体の知れない奴らなんだよ。俺と兄さんの2人だけの空間がベストなんだ」
わーおヤンブラ……。
そう言いながらも、彼は俺へと手を伸ばす。
「やめ…………あ?」
「やっと効いてきたかぁ。さっき殴ってきたから、ダメだったかと思った!」
身体に、あまり力が入らない。ついでになんだか、熱い気がする。くそっ、危険な奴から渡される水は何かがあるって愛が言ってたのに!
芹澤さんはそんな俺へと跨り、ゆっくりと押し倒した。
「ね、君はどんな人なの?教えてよ」
「やめて、ください」
「後輩くんには、どんなことされたのかな?そんで、どうして今はそんな普通に彼と接してるの?」
芹澤さんの顔が、首元に埋まる。
濡れた感触が伝わり、身震いした。
「あんなに酷い目にあったのに、許しちゃうの?」
耳元で囁かれた小さな言葉は、俺の中でひどくよく響いた。
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