平凡とヤンブラと

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********* それは、俺が中学生3年生のことだった。 「彼女できたー!」 中学最後の年の夏休み明け、俺は彼女ができた。 「あああっちゃんに!?俺が許した奴じゃないとダメだぞ!!!」 「なんでお前に許しを請わなきゃいけないの」 幼馴染みのケンがぎゃあぎゃあ騒ぐ中、工藤だけが呆然としたように立ち竦んでいた。 「工藤?なに、羨ましいのか?」 俺がからかうように言うと、工藤はいつもの小生意気な態度で笑った。 「彼女の1人や2人で大騒ぎしないでくださいよ」 「いや1人だけだから」 いつも通りの、はずだった。 俺はこの時には受験する高校をいくつか絞っていて、その中には今いる桜庭も入っていた。 それを工藤に打ち明けたのは、卒業間際だった。 「……桜庭って、あの金持ち学校の?」 「そーそー!受かったぜ!」 「…………」 今思えば、これが工藤の心に最後の追い討ちをかけたものだったんだろう。 「…あそこホモばっかなの知ってるんすか」 「あーーまーーー噂にはな。でも設備は良いし、何よりほとんどタダだし。いやーー彼女いるのに彼氏もできたらどーっすかね!!」 「それに、寮じゃないっすか……」 「ああ、よく知ってるな」 この時の工藤は俯き、今までに見たことないほどに切なげで。 「先輩、俺、会えねえの、寂しい」 絞り出すように出した声は、震えていた。 *
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