1747人が本棚に入れています
本棚に追加
/181ページ
*********
それは、俺が中学生3年生のことだった。
「彼女できたー!」
中学最後の年の夏休み明け、俺は彼女ができた。
「あああっちゃんに!?俺が許した奴じゃないとダメだぞ!!!」
「なんでお前に許しを請わなきゃいけないの」
幼馴染みのケンがぎゃあぎゃあ騒ぐ中、工藤だけが呆然としたように立ち竦んでいた。
「工藤?なに、羨ましいのか?」
俺がからかうように言うと、工藤はいつもの小生意気な態度で笑った。
「彼女の1人や2人で大騒ぎしないでくださいよ」
「いや1人だけだから」
いつも通りの、はずだった。
俺はこの時には受験する高校をいくつか絞っていて、その中には今いる桜庭も入っていた。
それを工藤に打ち明けたのは、卒業間際だった。
「……桜庭って、あの金持ち学校の?」
「そーそー!受かったぜ!」
「…………」
今思えば、これが工藤の心に最後の追い討ちをかけたものだったんだろう。
「…あそこホモばっかなの知ってるんすか」
「あーーまーーー噂にはな。でも設備は良いし、何よりほとんどタダだし。いやーー彼女いるのに彼氏もできたらどーっすかね!!」
「それに、寮じゃないっすか……」
「ああ、よく知ってるな」
この時の工藤は俯き、今までに見たことないほどに切なげで。
「先輩、俺、会えねえの、寂しい」
絞り出すように出した声は、震えていた。
*
最初のコメントを投稿しよう!