龍のツメあと

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高校卒業と同時に夜の世界に飛び込んだの。 最初はほんのアルバイトのつもりだったけど、学歴も家柄も関係ない自分の力だけでナンバーワンになれるキャバ嬢の仕事にのめり込んだ。 シャネルのスーツもケリーのバッグも欲しい物は自分で買えた。 デブやハゲの相手だって平気。 話してみると意外と面白い。 少しくらいのお触りも我慢するわ。 だって、どんな仕事も我慢はつきものでしょ。  それに、基本的に人間が好きなのね。  何より嫌いなのは夜独りきりでいること。  パパは早くに亡くなって、ママは忙しかったから、独りの夜が多かった。  だから、この仕事を始めたのよ。  お客を癒しているつもりで癒されているのかもしれない。  そんな訳でナンバーワンになるのも早かった。  天職だと思う。  でもこの仕事を選んだ理由はママには言ってないけどね。  ママってお店のママじゃなくて私を産んでくれた本当のママのことよ。  ママは超過保護だから、独りの夜が寂しいなんて言ったら仕事をほったらかして帰ってくるわ。  嬉しいけど、仕事をしている時のママは好きなの。  外資系のメーカーのマネジャーをしているの。  とっても格好いいのよ。  二人で並んでいると、よく姉妹に間違えられる。  ちょっとシャクだけど自慢のママよ。  そんなママの成功の秘訣はね。  もう30年も通っている霊能者の先生が居ることよ。  先生の教えの通り毎年大祭の日は欠かさず、龍神様のいるお寺にお参りをしいるの。  そのお寺で龍神様の陶器を頂いて祀っている。  毎朝、かかさず龍神祝詞(のりと)を唱えるわ。  私がこの仕事を始めてから一緒には無理になったけど、私も毎日かかさずに手を合わせているわ。  物心がついたときからの習慣なのよ。
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