美の慟哭

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 この話はかのミレニアムな年――そして僕がまだ高三だった頃の話だ。  その頃僕は普遍的家庭及び学校の問題を抱えていたことに加え、さる特殊的案件をこじらせていたばかりか、初めて出来た彼女が実は大の親友とも通じていたなどという古典的惨劇にもあい――いや、全くの冗談ではなく――傷心的な生活を送っていた。要するにロクに学校も行かず、親とも大喧嘩をして当時一人暮らしをしていた後輩のワンルームにやさぐれる。あれよと言う間に友人一人に女が三人も加わって六人暮らしとなる。そこで僕は煙草を喫む、酒も飲む、食べる、寝る、起きた、よちよち、シャワーといったなんの創造性もない一日を巡らせていた訳だ。  もっともそんな惨状では生きていくのだって窮する。当座の問題はただひとつ、金がない、これだけ。そんな調子だったから疾うに親には見限られていたし、戻ったところで小遣いの支給される見込みはおおよそない。その為に僕は頼み込み、とある友達の親の経営するコンビニで週に三日ほどバイトをしていた。  給料は月に五万ほど出た。そしてそれは――もちろん当時としてはだが――決して少なくはない金額のように思えた。現に僕はその頃からミルク・ボーイのシルバーリングだのキャサリン・ハムネット・ロンドンのTシャツだのといったものをこの身に侍らせはじめ、時にパラメンの突き出た吸い口を歯噛みしては咽せていたのだがしかし、それはまた同時に、ひとつの問題をも浮き彫りにすることとなった。  前述の通り、僕には仲間がいた。そして彼らもまた金がない。僕を含めた男勢三人はあくせくとバイトをしていたが、到底無理。残りの女三人がびた一文として稼いでこなかったからだ。彼女達はどうにも金は男が稼いでくるものと端から信じて疑わないらしく、だがそれはまだいい。女の内の一人は元からの友人の彼女だったし、また一人の女はいつか後輩とデキている。つまり彼氏が彼女に奢るのは一般的に鑑みても全くの当然となるからまだよかったのだがしかし、ここでの問題はやはりハブられた僕のことだろう。
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