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 幼い頃から何となく続けていた絵を描くことがいつの間にか仕事になり、知らず知らずのうちに評価され、気が付けば作品が売れるにつれ名前も売れていた。  面倒だからとメディアには一切露出せずにいたのも、世間が騒ぐことに一役買っていた。  絵が一枚売れれば、取り敢えず半年は何もせずに暮らせる。  だから私はあと二十年は遊んで過ごせる。  でも結局私は遊ぶことにも飽き、キャンバスを前に一人遊びを始めるのだ。  自慰にも似たこんな絵を買う人の気が知れない。  そうして私は今日も地下のアトリエで、一人遊びのフィナーレを飾るべく指先の様に繊細な絵筆を水に浸す。  色は無い。  強いて言うなら透明が今の気分。  ぽっかりと空いた穴の中は何色だろう。  ドーナツの真ん中は、どんな色が見えると思う?  因みに私の真ん中は嘘みたいに赤く、ピンクな臓器が犇めいている。
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