5人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「早いなー、無知が来てからもう一ヶ月かー」
信也がしみじみ、楽しそうに言った。
「本当、だいぶ慣れてきたよね?」
雫の言葉に無知は頷く。
「けどまだオドオドしてるよな、まーだ緊張してんのか?こいつの前で」
そう言って信也を指差す秋に突っ込む信也、それを見て笑っている雫。
僕はこの人たちの部屋でよかったなと最近益々思うようになってきた。
緊張をほぐしてくれる信也さんに、何処か大人な秋さん、優しく何でも教えてくれる雫さん。
おかげで部屋にいるととても楽しい。
この施設に関しても大体わかるようにもなったし、一人で楽しめる場所も出来た。
たまに階段の人形の人と話して笑い合っては、 施設内に飼育部屋があるのを知って一人で子犬を抱っこしたり。
此処での楽しみが毎日見つかって、本当に楽しい。
勉強会にも参加する予約をとった。基本的な言葉の授業だ。
凄い人は弁護士を目指して勉強している人もいるらしい。皆其々頑張ってる。
最近の一番の楽しみは、敦士さんと話すこと。
公園へまめに行ったり、公園から帰る時についでに二人で噴水を見る。
まだ少し肌寒いけれど、服が支給されたのでちゃんと厚着して。
敦士さんの話は聞いていて楽しいし、凄く勉強になる。
授業じゃなくて、何か大切なものを教えてもらってる気がする。
たまに敦士さんは、こういうこと言うとくさいかなーって笑うけど、僕はその度、そんなことないですと真剣に言う。
僕の脳裏に焼き付く、あの本と敦士さんのメモ。僕は全部正しいと思っているから。
だから、二人の時間は凄く楽しい。
あれからマメに図書館にも行くようにもなった。
秋さんの辞書と見比べながら、大体小学校向きの本なら普通に読めるようになってきた。
図書館の係りの人も面白くて僕にも優しい。
たまに変なこと言うけど、そんなとこもまた楽しい。
そんな感じで施設を堪能している僕。
悪魔さんとは
あの日から一度も話していない。
もうお互いが居ないような空気になってきている。
あの時の彼の言葉を全て信じたわけじゃない。そういう人だってたくさんいる。
でも、幸せに生きている人も居るんだとわかってほしかった。
だから、僕は悪魔さんが言うような人にはならない。僕は幸せ、それが僕の主張。
悪魔さんが今何を考えてるのかはわからない。
でもきっと、冷たい目で周りを見ているんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!