色褪せた記憶

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保健室はすっかりあったまっていた。 「ふう、あったかーい」 成海が無邪気な声を上げる。 「あ、職員室とか寄るの忘れてたな」 「あとでいいわよ。もう少し暖まりしょ」 そう言って、晴人を引っ張りベッドに座る。 「晴人、あのさ」 成海がそっと晴人の手の上に自らのの手を重ねる。 腕輪が擦れる音が、晴人にはやけに大きく感じられた。 「もしも……もしもね。このまま、元の世界に戻れなかったらさ……」 「…………………………」 「私たち……」 パリンッ 成海の言葉を遮ったのは、もう何度目かわからない『何かが割れる音』だった。 パリンッパリンッパリンッ 音は立て続けに鳴る。
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