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「部員は全部で十八人だけど」
驚いたように声をあげた。
「えっ、十八人も居るの? 凄いね」
苦笑いで悠哉が応えた。
「凄くないよ。うちは少ない方だと思うよ。十八人って、甲子園のベンチに入れるギリギリの人数だし、他の高校は三十人とか五十人くらいは居るんじゃないかな。名門校ならざっと百人は越えるよ」
そうなんだ、と聞いた未希は顔を赤らめる。だって、そこまで野球に詳しくないんだもん。
でも──。うつむく顔を悠哉に向ける。そして、小さな笑顔を添えて言った。
「でも、少なくて幸いだね。甲子園に行ったら全員ベンチに入れて、試合に出られるかも知れないしね」
未希の笑顔に、より大きな笑顔で応えた。
「そうだよな。誰一人、淋しくスタンドで応援しなくていいしね。部員十八人と監督とマネージャーの、総勢二十人で勝ち抜いてやるよ」
まぶしい悠哉に負けじと未希も、決意を腹に落とした。
──二十人分かぁ。頑張らなきゃ。
悠哉に自宅まで送ってもらったあと未希は、父親に広島まで応援に行く許可をもらい、友人に電話をした。
今の高校で仲良くなった、塚本沙織は嬉しそうに言った。
「面白そう。喜んで行くわよ。未希のその計画に乗った」
ありがとう、と電話を切って未希はつぶやく。
「さあ、忙しくなるわね」
そして、試合当日を迎えた。
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