キスの先

12/22
1331人が本棚に入れています
本棚に追加
/440ページ
どんどん壁際に追いやられて、好奇な瞳にさらされる。 「へー。オトコ女って言う割に、意外と可愛いーじゃん」 「いいなー。テストで負けたらヤラしてくれるとか、オトコ前じゃーん」 つんと香水の匂いがして、吐き気を催す。 オレが顔を歪めると、 「あはは!さすがのオトコ女でも、この状況は怖いんだぁ」 と喜んで声を上げた。 テメーら、本物の鬼畜だな! まだアイツの方が可愛く思える。 いや、嘘。 全然可愛くねぇ。 「なんかさー、こいつ、宮古ともヤッてるらしいよ」 茶髪が言った。 「マジかよー!宮っちゃんとも!? ガキくせー割にけっこーたぶらかしちゃってる系~?」 「ち、ちがっ…!!」 「じゃー、俺らとヤッてもへーきだよねぇ?」 「!?」 その瞬間、集団の一人に顎を掴まれた。 そいつがニタニタしてオレへと近づいてくる。 殴ろうにも、他の奴らに押さえつけられているせいで殴るに殴れない。 マジかよ! うそだろっ!? なんでこいつらなんかに…っ!! カシャッ…!! するとその時、携帯のシャッター音が響いた。 「は?誰?そんなおいしいことしてくれてんの」 オレに近づいてきていた男が、にやりと笑った。 「!?!?!?!?」 これこそ絶体絶命だ! ネタを取られていたら、オレはこいつらの奴隷だ。 これこそ終わりだ!! うるうると涙腺が弱り始めてきた。 「誰だ誰だ」と、ニヤニヤしている声が徐々に遠ざかる。 「……?」 覚悟を決めて、視線を上げるとそこに倉森が……… 立っていた。 「暴行現場の写真、しっかりと納めさせていただきました」 こいつはこんな時でも、相変わらずスカしていた。
/440ページ

最初のコメントを投稿しよう!