第1話

分かれ道

みゆき以外が楽しそうに話していた。
食事を取り分けて女子アピールしたり、場を盛り上げて注意を引こうと必死な男ども。
女は男を値踏みし、男は目をギラギラさせて、1番可愛い早苗を狙っている。
早苗は可愛いと自覚しているから、オシャレも気遣いも話し方も全てぬかりない。
が、性格は悪い上にワガママだ。
それを知っているのはこの場の女子だけで、男子は知る由もないだろう。
早苗は自分より可愛い子を合コンには呼ばない。今のメンバーは、たまに話しをする程度の付き合いしかない、いわば数合わせのメンバーだ。
断れば嫌がらせだし、来ても惨め。
だったら頑張って彼をと思っているんだろうけど、甘いよ。
私は連れて来られた女子の服やら顔を見て、驚くほどの共通点を見つけた。
皆、同じような格好。
だけど安っぽい。
早苗はブランドモノがチラチラ見えて、安っぽい感じもない。
ちなみに私は合コンに興味がないので、ジーンズにTシャツで来た。
バイトにそのまま行くの？ って早苗から言われたけど、その通り。
バイトから直行で来ただけ。
とりあえず、早苗から意地悪されるのは勘弁。
話しの輪にも入らないから、本当に今は無視されているんだけど、大した奴らでもないし、気合を入れて合コンしたって、結婚したいって言ったらドン引きだもんね。
あー結婚したいな。
合コンより、婚活行きたいなあ。
グビグビっとカシスオレンジを呑む。
足りなくなってきたので、もう一杯頼もうかと思ったけれど、その他大勢が邪魔で面倒だった。
早苗が男子にチヤホヤされて、ニコニコしている。
それを見て思わされる。
私はやっぱり負け組だよね。
結婚しても。
自分で鏡を見て自覚しているし、今も早苗の数合わせ要員にすぎない。
そんな私が、お金に不自由なくて、しかも専業主婦なんて、そりゃ夢みたいなもんだよね。
所詮、男が女を見る所なんて顔なんだからさ。