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黒い瞳が鋭く光が灯ると僕の声が尻窄みに消えそうになった。
一瞬だけ、一哉さんは黙りやがて言った。
「わからないのか、本当に」
「わからないです、本当に」
おうむ返しに無意識に僕の唇から問いが落ちる。
すると可笑しげな吐息が溢れた。
「好きな奴の妹の夫になるんだぞ? 俺は、多分親父とおなじ気持ちを抱くさ。好きが憎しみに変わって一生恨んでいくはずだ。そんな生活を一生するなんて想像するだけで吐き気がする」
「一哉さん……」
「そんな顔をするな。桜と、結婚すればの話だ。政略結婚以外で高嶺の借金も帳消しする方法を模索すればいい」
「え、あるんですか!!そんな方法が」
僕が半身、一哉さんの方向に乗り出す。一哉さんが体を受け入れるように深く抱きしめてきた。
「ないな、今は」
「え……」
淡々とでる言葉に正直に僕は肩を落とした。すると一哉さんは僕の肩に顔を置いた。
「ただし、あいつの協力次第で状況が変わる」
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