黒い箱

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最悪な毎日、今日もそれが始まった。 朝起きて歯を磨きながら、鏡を眺める。 自己評価ではあるがそんなに悪くない顔立ちはしていると思うし、愛想だって悪くないはずだ。 だが、どういうわけか顔が気にくわないとか言う理由で良くないヤツらに絡まれた。 いや、顔がどうこうと言う訳じゃないのかもしれない。 そういう素振りをしたとか、そんな記憶は少なくとも自分が思いつく範囲にはない。 たぶん“そういう相手”を探していた時に目に入ったのが自分だったというだけだろう。 「孝哉(こうや)ーー、時間よー。 早く朝御飯食べちゃいなさい」 いつも通り母親の朝を告げる呼び声がする。 別に学校に遅れそうだとか、そんな時間に起きたわけではない。 ただ、母親が普段の朝の時間のサイクルから外れてしまう事を嫌っているだけだ。 孝哉は早々に歯磨きを終わらせると部屋に帰って素早く着替え、ダイニングへと向かう。 それが孝哉の“最悪の1日”のいつもの始まり。 の、はずだった。 孝哉が着替えを済ませてダイニングに入るといつものようにテーブルに並べられた朝食に紛れて、宅急便の伝票のついた小さな段ボール箱が置かれていた。 「母さん、これなんだ?」
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