黒い箱

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「知らないわよ。朝、玄関に出てみたら置いてあったのよ。伝票にアンタの名前書いてあるんだからアンタのじゃないの。 やめてよね、こんな朝早くに配達の時間設定するの」 母はケンケン怒りながらも化粧をして、ダイニングを足早に飛び出していく。 「いい、食器はいつも通りキッチンの流し台に浸けとくのよ」 そう母がいい終えるのと同時に玄関が閉まる音が聞こえた。 「なんだよ」 俺は視線で母を見送るとそのまま段ボール箱に目を向けた。 俺はこんな荷物は知らない。 少なくともここ1ヶ月ほどは通販なんて利用した覚えなどない。 俺宛に荷物なんて送ってくるやつなんて思い浮かばないし、親戚なら宛名は母になっているはずだ。 そもそも朝早くにしかも何も言わずに玄関に荷物を置いていく宅配などあるのだろうか? 不信に思いながらもなんとなくその荷物から目をはなす事ができず、俺は早々に朝飯を食べてしまうとその荷物を抱えて自身の部屋へと持ち帰った。 時計を確認する、いつもの登校時間までにはまだ少し時間がある。箱の中身を見てから家を出ても十分に間に合うだろう。 伝票には割れ物や生物(なまもの)などの表記はなく、中身の予想がまったくつかない。 どころか宛先の俺の名前以外は何も書かれていない、これでは送り主もわからない。 正直、怪しいにもほどがある。 だがとりあえず振ってみる事にした。 軽い重量感はあるもののかなり丁寧に梱包してあるらしく、いくら振っても中の物が動く感覚や音はしない。
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