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「はは。男の人って、面倒臭がるよね。私から望に喝入れてあげようか?ちゃんと式場見に行きなって。」
さえこと望は、この秋結婚をすることになった。
素直に嬉しい。
「何言ってんの。果夏の方が今忙しいのに、煩わせらんないよ。」
「そうでした。」
この春から櫻井さんは本社に戻ってきた。出向も、キャリアを積む、という意味でのものだったらしい。片道切符でなかったことに心底安堵する。
もちろん、配属先は元の部署だ。
そして、八月十二日。
私の、二十四歳の誕生日に結婚する運びとなった。
結婚式まで、あと一週間。
だというのに、仕事はお互い山積みで、残業の日々である。
「でも、本当に良かった。肩の荷が下りたよ。」
「私もだよ。望とさえこが上手くいって良かった。」
二年程前の冬。大阪から帰った私は、望に会いに行った。
初めは納得してくれなかったものの、去年私が櫻井さんと結婚をすると報告すると、やっと納得してくれた。それから、程なくしてさえこと付き合い始めたと聞いている。
「髪、伸びたね。」
胸まで伸びた髪を見て、さえこが言った。
「うん、そうだね。あれから、二年だもん…。」
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