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夏の炎天下の中、両手いっぱいに教材を持ち、汗を垂らしながらとぼとぼ歩く少女の姿があった。
その少女、名を“霧野 沙耶(きりの さや)”と言う。
彼女は今、一学期の終業式を迎えて家へと帰っている所である。
普通の女子高生ならば夏休みに浮かれているのだろうが、彼女は違った。
彼女は憂鬱とした面持ちであった。
何もそれは暑さのせいではなく、成績が悪かったわけでもない。
では何故か。
それは、彼女が“代わり映えのない繰り返しの日々に飽きていた”からである。
彼女は特に行きたい学部や大学も決まっておらず、何となくで文系を選択している。
高校2年という重要な時期であったが、彼女からはやる気を見い出せない。
かといって遊び歩いているわけでもなく…真面目とも不良ともとれず、ただただ普通の生徒であった。
運動も学業も平均的であり、目立った行動は避けている。
友人はそれなりにおり、誰かから恨みを買ったことも無かった。
親もその現状を不満に思わず、彼女の生き方について口出しすることは無かった。
それなのにーーいや、だからこそ彼女は現状に飽きてきていた。
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