第1章

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開いてはいけないドアが、開いた。 今まで一度もあいたことのないドアが… 俺たちの学校には不思議な話がある。怖い話ではないんだけど、生徒や先生、みんなが知ってる話。 二年前、統廃合によって俺たちが通っていた中学と同地区内のもう一つの中学が合併し、東野中学になった。 当時二つの中学校舎は老朽化が進んでいて、生徒や地区の住民たちの希望により東野中学は新しく校舎が建てられることに…。 工事は順調に進んで行った。でも完成したあとの下見で問題が浮上する…。 下見は地域の役員やこの中学に就く教師たちが一つ一つ部屋を見てまわる作業だった。 役員たちが一通りの部屋を見終わる。 「えーと、この部屋で最後ですね。」 三階の教室棟…そして特別棟。 最後の部屋は特別棟廊下の一番奥、教具室の隣にあるドアだった。 「あら?」 役員の一人が首を傾げる。 「このドアどこにも通じてないみたいよ、ほら、校内図にもないもの。」 確かに渡された校内図にはこのドアの記載がない。さらにいうと、他の部屋にはすべてなんの部屋かという札がついているけど、ここにはなにもない。 …おかしいところはたくさんあった。 「本当ですね、それにこの先は隣のドアから入れる教具室のはず。」 「設計ミスか…?困るなぁ、もうじき生徒たちが移ってくるのに。」 不安や不満が漏れる中、とりあえず開けようという誰かの一声がありドアに手がかかる。 ガチャ ドアが開いた音ではなかった。ドアノブが回らないときのという金属音。 「あかない…」 やはり設計ミスか…。これは問題じゃないか?その場はざわめいたが、自分たちにはどうすることも出来ず、報告書として提出した。 その後の調査で、工事に関わった全ての人がそのドアの存在を知らないことがわかった。ドアの生徒に対する害や、第三者がなんらかの悪意を抱えて作った可能性なんかも調べられたが、結局ただのあかないドアということがわかり、特に撤去という話も出ず…。そのまま俺たちはその校舎に移った。 「なぁ、知ってるか?なんか変なドアがあるらしいぜ?」 親が役員という生徒や、そういう類の話が好きな教員からドアの話は広がった。誰もが知っていたが、所詮はただのあかないドア。興味はすぐ薄れていった。
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