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今日一日、色んな事があったなぁ。
二人が出て行ったドアをボーッと見ていると、低い音があたしに纏わりついてきた。
「座れば?」
「あ」
そうだった、もう一人いたんだ。ヤバい、あたし忘れてたよね今。
「あの若先…」
「中山、知り合い?」
帰ります、と、伝えたかっただけなのに。
人の返事も、話も全く聞かないこの男。
どうして変な所に食いついてきたんだろう。
「?」
あたしはとぼける事に決めた。
昔の事には触れたくないし、ましてや全然関係のない相手に話す事でもないし。
「知りませんよ」
あたしは若先生の眼をしっかり見て答えた。
「ふーん」
いかにも興味無さげな若先生。
だったら聞かなきゃいいじゃない。
とは、言えなかったけど。
吉川医院の求人募集で面接に行った時、あたしは履歴書にN大の事も、自分がナースだったという事も書かなかった。
大学も学部を書かずに大学名だけを書いた。
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