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ただの お世辞でも ただの 社交辞令でも 嬉しいと感じてしまった事実は 否めない。 言い過ぎですよ、と首を振って あたしは席を立った。 手洗いに行く途中 通りすがったナースに すごかったね、と言われて 凄いのはドクターなんだ。 勘違いもおこがましい、と自分に言い聞かせる。 その日の就業後 浅野先生に誘われて 何となく断れなくてナース3人と待ち合わせ場所へ向かう羽目に。 そこには 大森先生がいた。 一緒に来たナースから少しの歓声が上がる。 そんなに 嬉しいもんなんだろうか。 大森先生と目が合って 軽く頭を下げた。 「あなたも誘われたんですか?」 「はい、そうみたいです」 あたし達は駅の近くの ちょっと洒落た個室居酒屋に入った。 こうやって仕事後に飲みに来るなんて 凄く久しぶりの出来事で ちょっといつもよりハイペースになっていたのかもしれない。 あたしは隣に座る大森先生と とても話が弾んでいたらしい。 暫く経ってから現れたその人物に気付かなかった。 「大森先生ってどっか意地悪ですよね」 「私が?ですか」 「そう」 「例えば?」 「ここ」 あたしはそう言って、ビシッと人差し指で指し示した場所。 「……ここ、ですか」
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