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「そう、ここです」
あたしが指したのは大森先生の目と目の間のスペース
世間一般には眉間と呼ばれている辺り。
「こんなところに
意地悪もクソもあるんですか」
飄々とした物言いに
たっぷりと現れている意地悪度。
「ほら、そんなところ
もンの凄い意地悪っぽい」
この人と最初に出会った時のあの感じがまだ尾を引いていて
最近人気があるというこの態度にあたしはいまいち頷けない。
「そういえば、先生今日は飲んでるんですね」
「?あぁ、えぇ」
一瞬、何の事だか分からないといったような表情を見せたが
直ぐに飲んでいたビールに目を落として頷いた。
この間、名古屋で宴会をした時はウーロン茶しか飲まなかったから、大森先生がお酒を飲んでいる姿も、なんだか馴染めない。
まぁ、こういった席に一緒にいるのがただの2回目だから仕方ないんだけど。
だけど
最初のイメージって
その人の像を結構造り上げてしまうもんだなぁ、と改めて思った。
「やだぁ、吉川先生ってば!」
ハッと気付いて
入り口を見る。
初め、このお店に来た時は5人だった筈なのに
振り返ると既に、8人、いや、10人は居るだろうか……。
そしてその中に
今、吉川先生と呼ばれた人物も居て。
あたしの知る吉川先生は一応二人……。
そのうちの若い方の吉川先生だった。
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