第二章

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あたりまえだ。悪いことなんてしていないのに、責めるような目を向けられたら誰だって怒る。 僕は本当に情けない。 「……悪い。動揺して、つい。ごめん」 「別にいいわ。……あたしも、怒って悪かったわ」 「いや、怒るのは当然だ」 気まずい雰囲気が流れる。 しばらくして、どちらからというわけでもなく歩き出した。 「もしかしたら、春浦さんは思い出したくないのかもしれないわね」 呟くように、彼女は口にした。 僕は、何も答えられなかった。 ☆ 学校からの帰り道。僕は公園のベンチに座り、ぼんやりと夕焼け色の空を眺めていた。 頭に浮かんでくるのは、春浦先輩の顔ばかり。そのほとんどが笑顔だった。 どうして。そんな言葉が何度もちらつく。 自殺するような人には見えなかった、というのは僕の勝手な印象でしかない。だけど、やっぱり信じたくはなかった。 だからだろうか。悲しいという気持ちはない。それどころか、いやに冷静な自分がいた。 そんな自分を殴りつけてやりたいと思うのに、思うだけで怒りの感情なんて湧いてこない。 ただ空虚な気持ちだけが心を満たしていて、どうすることもせずに呆然としていた。 「やあ、遠坂君」 突然かけられた声に、空から視線を外す。 そこにいたのは少女のような格好をした少年。 デニムのホットパンツに黒のニーソックス。そしてスポーツシューズ。 上は襟の広い柄付の白いTシャツと、その中にタンクトップでも着ているのか、左右の肩らへんに紐ようなものが見えた。 「……有村」 「こんなところでなにやってんのさ」 そう言って、有村深雪は僕の隣に座った。 「お前こそ、風邪じゃなかったのか」 「んー? ああ、今日はそう言ったんだったか」 「やっぱりサボりかよ」 「そうとも言う」 「そうとしか言えねえよ」 沈黙が流れる。 聞こえるのは風邪によって揺れる木の葉が擦れる微かな音。そして、遠くに聞こえるカラスたちの鳴き声だけ。 「なんだか元気がないようだけれど、どうかしたかい?」 しばらくして、沈黙を破ったのは有村だった。 「……いや、なんでもない」 「そっか。てっきり、美咲ちゃんのお姉ちゃんのことで落ち込んでいるのかと」 ……。 こいつは今、何と言った?
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